免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫関連有害事象(irAE)に急性間質性腎炎(AIN)があって、そのリスクはプロトンポンプ阻害薬(PPI)服用患者で高いと報告されている。なぜか?
ICIは自己寛容を誘導するメカニズムを阻害することで自己に反応するT細胞を活性化する。ICI-AINで多く見られるリンパ球はT細胞で、ICIによって活性化したT細胞が腎臓(自己)に集まってきていると想像される。
ただ、ICIは腎臓に限らず全身にirAEを起こしうるうえ、すべての患者がirAEを発症するわけではない。だから、とくにICI-AINを惹起する、別の要素があると考えられる。その一つが、PPIなのかもしれない。
PPI、NSAIDs、抗菌薬などAINを起こしやすい薬物には、T細胞による免疫反応を起こすポテンシャルがあると考えられる。より詳しくは、PPIそのものに抗原性があるというよりも、PPIが体内で蛋白質と結合することで抗原性が生まれると考えられている(そのような役目をする物質をハプテンという)。
PPI/蛋白質抗原は腎臓の中(尿細管や間質)で作られているかもしれないし、腎臓の外で作られて尿細管や間質に達する(糸球体で濾過され、尿細管で再吸収される)のかもしれない。そして、間質の抗原提示細胞(樹状細胞)に提示され、T細胞による免疫反応を惹起するのかもしれない。
・・という話を一般腎臓内科フェロー向け病理カンファレンスで聞いた(CKJ 2023 16 1834)。急性間質性腎炎はT細胞による炎症なので、好中球よりも特異性が高く(adaptive immunity)、病態理解が近いのかもしれない。