腎移植施設として成功したかったら、施設の中で人脈や体制が必要なことはもちろんだが、施設の外、とくに一般腎臓内科医との関係もとても大切だ。Win-winでなければ、good luck with that(まあ無理だと思うけど、せいぜい頑張って)になってしまう。
最も大切なことは、「患者を返す」ことである。米国の腎臓内科医は、移植後患者もフォローする。そして、同じ患者を二人の腎臓内科医が診ることはできない(一人しか請求できない)。だから、「移植後(たとえば)1年お預かりしたあとは、お返ししますよ」と約束していれば、「あそこは患者を取る」というトラブルにならない。
要は金銭的な事情であり、移植や米国に限った話でもない(「一般内科医の診ているCKD患者を腎臓内科医が取ってしまう」も、よく聞く話である)。でも、大事な話である(金銭的にいえば、米国は透析患者を移植にreferするインセンティブはあるが、透析前CKD患者をreferするインセンティブはないので、透析前の紹介は善意に頼るしかないのが実情だ)。
「僕たちは移植後患者さんをずっと診ます」と言えば、責任感があると思われるかもしれないが、そうばかりも言っていられない(もっとも、移植をすればするほど移植後患者は増えるので、お返ししなければならない移植施設側の切実な事情もあるのだが)。
大事なことは、連携することである。必要な時にはすぐに移植施設に連絡してもらうように、良好で密接な関係を築くことである。金もさることながら、「あそこはちゃんと診てくれるしいつでも相談に乗ってくれる」と思われれば、引き続き患者を紹介してくれるだろう。
米国で腎臓内科医が移植後患者を診るといっても、フェローシップでは3か月程度しか腎移植内科を回らない。だから、そんなに難しいことを求められるわけではなく、免疫抑制薬のマネジメントが落ち着いた患者を、CKD-T患者(移植後ではあるが、メインはCKD管理の患者)として診てもらう。CKD管理じたいは、腎移植内科医より経験があるのだから、むしろ腎移植内科医が診続けるよりも患者には有益かもしれない。
そして、想定外の事態や疑問があったら、いつでも移植施設に相談する。AKIがあれば、「CNI?移植腎動脈狭窄?尿管狭窄?尿管膀胱逆流?移植腎盂腎炎?拒絶?BK?・・」と、腎移植内科医の出番になる。