先日外来の手厚さについて触れたが、看護師さんは患者さんと話すときにチェックリストを用いる。「だいたいあれやこれを聴くのかな?」とは想像できるだろうが、漏らしがないようにするのがチェックリストであるから、その一例を紹介する。
・日付、患者氏名:移植外来に来るのはみんな移植患者であるから、忙しいと「あれ、いま誰の話をしている?」と混乱することもある。せっかくチェックリストを使っても、取り違えては意味がない。
・移植日(腎臓、腎臓/膵臓、多臓器):慣れてくると、日付と移植日だけで「3週間後のフォローだね」はおろか「26日だからぎりぎり4週間は経っていないね」などまで、すぐわかるようになる。
・次回受診日:プロトコルで決まっているが、透析を離脱できそう、腎生検を計画している、創部やドレーンの経過を見ている、などの場合は早まることもある。※だいたいの方針を伝えたら、予約は患者が受付で行う。
・次回検査日:検査は毎週・隔週・毎月と、受診の合間にも行われる。
・Prograf、Envarsus(1日1回のタクロリムス)、Sirolimus、Cyclosporineなど、用量調節の必要な薬の直近用量
・採血時間:12時間トラフであったかの確認に用いられる。
・免疫抑制薬と用量:Prograf、Envarsus、MMF、Myfortic(MMFのプロドラッグで下痢の副作用が少ないとされる)、Prednisone、Sirolimus、Cyclosporine、Bela(ベラタセプト)、Arava(レフルノミド:BKウイルス感染の治療にも用いられるが、抗RA薬であり免疫抑制作用も期待されている)
・血圧、体重、直近の体重、心拍数
・Incision(手術創)、抜鈎の有無:問題なければCDI(clean/dry/intact)と表現される。経過がよければ術後4週間程度で抜鈎し、処置は看護師さんが行う。問題があれば移植外科医をコールする。
・尿管ステントの有無と抜去日:泌尿器科医が行い、事前に尿培養を提出して結果に応じて抗生物質を投与するプロトコルがある。患者さんは苦痛を訴えることが多く、痛みがあまりにもひどい場合には全身麻酔で行われることもある。
・24時間尿量、飲水量:ccまたはoz(オンス、1ozは約30cc)で表される。患者は退院時に尿器やカップ、量を記載するノートを渡される。数か月してグラフト機能が安定すれば、不要となる。
・浮腫、下痢/便秘、悪心/嘔吐、振戦、発熱、腹痛:あてはまるものに〇をし、情報を追記する。
・頻尿、尿意切迫、出づらさ、痛み、血尿など、尿に関する症状:頻尿は、「無尿が長い人は膀胱が縮んでいるが、徐々にまた拡がる」などと説明されることが多い。
・CMVリスク:低/中/高、Valcyte(valgancyclovir)/Acyclovirをいつまで、など。
・EBVリスク、BKウイルス血症
・カルテを自分で閲覧できる機能を使用しているか:これがあるので、少なくとも外来では、検査結果を印刷して渡すことはなくなった。質問などをチャットする機能や、その回答をビデオ電話で受ける機能もある。まずこれらの窓口になるのは、患者の担当コーディネーターである。
・Karnofsky Score:Performance statusを表すスコアで、100%が最もよい。
・タクロリムスの目標トラフ:移植後3ヵ月、6ヵ月、12か月で少しずつ下がる。最近は前述のBelaを追加してCNIを減量するケースも多い。
・コメント/質問/心配:これを聴きとってくれるので、acknowledge(そうだったんですね、の部分)はある程度済んでおり、医師はaddress(それはこういうことだと思いますから、こうしてみましょう、の部分)に重きを置いて話ができる。
ここまでやってくれるので有難いが、当然それなりに時間がかかる。そのあと医師が診察し、決めた方針を看護師さんに伝えるのであるが、伝えようにも看護師さんは次の患者の診察室にいる、といったことが起こる。
また、せっかくすべてが早く終わっても、肝心の当日採血の結果がまだ出ていない、といったことも起こる。その場合、直近の結果を参照して帰宅となるが、当日の結果が出た後で「あれをしようこれをしよう」と患者に伝えるため、二度手間になる(外来後の業務に影響する)。
前日に採血してもらう(遠くに住んでいても、近所の病院や採血施設でできる)と、当日の動きはだいぶんスムーズになる。タクロリムスのように、1時間では結果が出ないものも、1日あれば出ている。しかし、結果が前日に出てしまうと、それを誰がフォローするんだという話になる。月曜日の外来では、日曜日にオンコール医師がフォローすることになってしまう。
手厚いのはよいが、外来はやればやるほど患者が増える。そのため、どの国でもどの科でも、それなりに大変(challenging)だ。それでも、手厚くないよりは、よい。私がとくに好きなのは、患者の質問や心配にちゃんと答えるところ、簡潔ながらも全員に身体診察を行うところ、そして、たとえ忙しくても少しは患者の生活と人生について話す余裕があるところである。